競馬コラム

2016年4月10日 (日)

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2011年12月10日 (土)

冬毛について

これから春先にかけ、冬毛のある競走馬をよく見ることがあります。犬や猫のペットを飼っている人はよく知っていると思いますが、動物は人間と違って、洋服や暖房で体温を調節することができません。ですから体毛を生やし、皮下脂肪を蓄えて寒い冬に備えます。
馬も汗をかき、皮下脂肪が少ない夏に比べ、冬が近づいてくると明らかに身体つきがふっくらとして、ひ毛(前髪やたてがみ、尾を除いた馬体全体に生える毛)が伸びてきます。皮膚も脂肪も毛も全てが厚くなっているため、普段よりもモッサリとして見えるかもしれません。

ただ、競走馬というのは、1年を通じて食生活や厩舎の温度・湿度、そして運動と徹底管理されているので、野生の動物ほど目に見えて大きな変化はありません。真冬とはいえない11月頃でも、美浦トレセンあたりの厩舎や牧場では、朝方の気温が低くなりそうな日には馬服を着せて夜を越します。これには、寒さから馬本来の防衛本能が働き、冬毛が伸びるのを防ぐ意味があります。このように競走馬は、人の手により1年中ピカピカな毛ヅヤを保っているわけです。

では、これほどまでに気を遣わなければいけないということは『冬毛がある馬は競走馬としてダメなのか?』という疑問が出てきますよね。この疑問に関して、結論から言うとダメということは無いと思います。僕も騎手だった頃、レースで数回冬毛のある馬に乗りましたが、全く走らなかったという記憶はありません。

冬毛にも許容範囲というものがあります。例えば、放牧休養明けの一戦目、もしくは二戦目であれば冬毛があってもおかしくありません。また、競走馬としての身体がまだ出来上がっていない(完成していない)馬も伸びやすいのですが、これは新陳代謝や筋肉量が関係しています。代謝が活発であればあるほど毛は伸びにくいのです。
さらに、ホルモンの影響から牝馬や去勢された馬は、牡馬よりも伸びやすい傾向にあるようです。ですから、少々の冬毛があってもダメだと決めつけずに、レース予想の際にはこうした状況を頭に入れてから検討をはじめた方が良いかもしれませんね。

ただ、冬毛が生えていること自体、あまり好ましくないのは確か。前記に「冬毛のある馬がダメというわけではない」と書きましたが、「走る馬の多くは冬毛が伸びていない」ということでもあります。
一般的に冬毛が伸びていない馬は、皮膚に美しいツヤがあり、鍛え上げられて代謝が良くなっているということですから、冬毛が目立つ馬に比べたら間違いなく状態が良い。例外があるとすれば、2歳馬で馬体が未完成でいながらも能力の高さで勝ってしまうとか、重賞で人気になるほどの実績馬でも、騎手がパドックで跨った時に「まだピリッとしてこない」と感じるような、仕上げ途上のケースなどでしょうか。冬毛の有無は、騎手にとってさほど気になることではありませんが、競走馬の仕上がり具合や体調の良さを知るうえでは目安になると思います。

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2011年11月 2日 (水)

現代の日本競馬に思うこと

天皇賞・秋が東京競馬場で行われました。優勝したのは単勝7番人気、イタリアのピンナ騎手騎乗のトーセンジョーダン。豪華メンバーが揃ったうえに、勝ち時計は1分56秒1の日本レコード。迫力と見応えたっぷりのレースが観られましたね。

ちなみに、このトーセンジョーダンを管理するのは、前週、オルフェーヴルでクラシック3冠制覇を果たした池江厩舎。その他にもオープン馬がズラリと並ぶ西の一流厩舎です。また、2着に好走したダークシャドウを管理するのは東の雄・堀調教師。さらに、天皇賞には管理馬が出走しなかったものの、ヴィクトワールピサウオッカで凄まじい実績を挙げ続けている角居調教師など、現在は40代の若き調教師たちの勢いが凄い。今はもちろん、これから10~20年先までの競馬界をもリードしていきそうな勢いがあります。

ただ、そんな快進撃を続ける人がいれば、同時に低迷に苦しむ人がいることも事実。調教師(厩舎)もそうですが騎手の世界においても同じ。上位と下位の成績は、まさに天と地。
昔はそれほど大きな差は感じませんでしたが、時代が変わった今は当たり前なのでしょう。優秀な成績を挙げる厩舎には大手牧場・大手馬主の良血馬が次々と所属し、どんどん勝利を挙げますが、大手との付き合いが薄い厩舎は、良血の素質が高い馬はどうしても少ない。新馬・未勝利から重賞まで、あらゆるクラスの賞金が上位厩舎に入るため、下位の厩舎は本当に苦しい思いをしています。

優れたものが勝ち、劣るものは淘汰される。勝負の世界である以上、努力した人は報われて当然です。それでも、昔も昔なりに羽振りの良い馬主が居てくれる厩舎はありましたし、様々な血統やタイプの馬や、個性的な騎手が各厩舎にいて交じり合い、競い合う時代だったので、皆に等しくチャンスがあったと思います。
時代や景気に左右されるとはいえ、道楽として馬を持つ個人馬主や、自分の牧場に継がれてきた血統にこだわるオーナーが減りつつある現在、投資や商売の対象として勝てる馬だけを扱う流れになると、あまりにも偏りが出て、面白みがなくなる恐れがあります。
『ギャンブル』としての立ち位置以上に、競馬ファンが愛してきた血統やそれにまつわるロマン。生産者のこだわり、馬と人の絆、騎手の想いなどの要素が薄れてきているのは、競馬ファンの人たちも感じていることではないでしょうか。

多くの競馬関係者が競馬界に閉塞感や危機感を抱いており、打破するための方法を考えていますが、僕は大手が中心になって進めていくのではなく、立ち止まってほんの少しの手助けをしてくれるのが良いと思っています。今まで限られた厩舎・騎手に与えていたものを、少しずつ周りに配分するだけ。大手としての自覚や責任を持ち、競馬界全体のためになる行動を期待しています。

僕がまだ若かった頃は、騎手が年間100勝するなんて夢のまた夢。岡部さんに増沢さん、柴田政人さん。それからしばらくして、武豊に横山典弘とこの大記録を達成しています。100勝するジョッキーというのは、その時代を代表し、誰もが認める『トップジョッキー』であり、年に1人か2人、多くても3人ほどの選ばれた者だけに許される称号でした。
しかし、この10年ほどは、毎年5人前後、多い年には9人もの年間100勝騎手が出ています。これはレース数が大幅に増えたわけではなく、それだけ有力馬が上位騎手に集まり、下位騎手に良い騎乗馬が回っていないということが一つの要因として考えられます。
現役時代の僕はお世辞にもトップレベルとは言えない騎手でしたから、妬みにしか聞こえないかもしれないし、確かに自分が『勝ち組』だったならば、このような疑問や不満など全く持たずに生きていたかもしれません。ただ、勝ち組だらけの世界などあり得ません。様々なタイプの人間がいてこそ、トップジョッキーが輝くのです。

それと、気になるのは外国人騎手の存在。外国人騎手が悪いという意味ではなく、単発でGⅠレースの騎乗依頼をしたり、あるいはGⅠの前哨戦だけは日本人騎手で本番は外国人など、乗り替わりの多さが目に付きます。
この天皇賞・秋も、外国人騎手の1,2着でした。海外のトップジョッキーが見られて嬉しい気持ちもありますが、やはり、以前からコンビを組んでいる騎手が騎乗する方が盛り上がるし、それが日本競馬の良さでもあると思います。競走馬のファン、騎手のファンなど応援する方法は人それぞれ。それでも馬と騎手がともに成長し勝利を掴む姿、人はこれに一番惹きつけられるのではないでしょうか。

海外にも通用する強い馬作りを目標に、長い間、競馬関係者は多くの汗と涙を流しました。そして今、世界トップレベルのGⅠレースで勝てるまでになりました。その思いや技術は、競馬に携わる全ての人の努力の結晶であり財産です。あとは原点に戻って、離れつつある競馬ファンの心を掴むことに力を注いでいってもらいたいと思います。
昔の騎手は、馬主・調教師(師匠)理解と支援により育てられました。競争なくては進歩がないのは分かりますが、厳しい冬の時代を迎えようとしている今の競馬界こそ、温かさが必要。人と人、人と馬の結びつきが感じられる、そんな競馬を再び観ることができたら幸せ。

現役を離れた今、僕が強く感じていることです。

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2011年9月 5日 (月)

秋競馬開幕に向けて…

■新潟から中山へと競馬場が変わる時、ジョッキーが騎乗する際、感覚や乗り方などは異なったりするのか?

□新潟競馬場と中山競馬場は、まず左回りと右回りという大きな違いがあります。さらに、日本一長い直線を持つ新潟に対し、中山は小回りで直線が急坂。たしかにコース形態は全く違いますが、それにより騎手が戸惑うようなことはほとんどないと思います。そもそも、騎手であれば各競馬場の特徴を理解し、それに応じた騎乗をしなければいけません。
とくにこの時期、トップクラスの騎手ともなると、土曜日と日曜日で違う競馬場に移動することもしばし。彼らはそれぞれのコースに合わせた騎乗をして結果を残していかなければ、信頼を得ることができませんからね。

騎手はレース中、皆さんが思う以上に全身を使って騎乗しています。ただ走る馬に跨っているのではなく、スピードを調節するために馬を抑える腕や胸の筋力や、走る馬の上を鐙(あぶみ)一本で乗っていられるバランス感覚や下半身の強さ。さらには、手綱にかかるわずか小指ひとつ分の力の入れ方にも神経を遣っています。そして、レースではハロン棒で距離を確かめ、体内時計でペースを把握しながら状況を判断しています。
これら全てを騎乗技術として身につけているため、騎手はたとえ初めての競馬場であっても極端に戸惑うことなく乗りこなせるのです。それゆえ自分の感覚だけが頼りになりますすが、その自信と才能が無ければ騎手にはなれないと思いますし、騎手ならば皆ができて当然ではないかと思います。もちろん、普段あまり乗らない競馬場よりも慣れている場所の方が乗りやすいのですが、それはただ単に騎乗経験の多少による精神的なものと言えるでしょう。

ちなみに、競走馬にとっても回り方が違う(馬によって得意不得意はある)だけで、景色や直線の長さが違うからといって、レースぶりに変化があるようなことはないと思います。
ただひとつだけ、新潟競馬場の直線1000mを使われた馬に関しては、少し気を付けなければいけません。スタートからひと息で走ってしまうコースなので、その後に行きたがる面が残ってしまうケースがあります。その時は、やや折り合いに苦労することも…。騎手としてはレース前から馬をより落ち着かせておくこと。それと、スタート直後に目一杯追うことだけは絶対に避けています。

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2011年8月 8日 (月)

新潟の直線競馬を斬る!

■直線競馬で競走馬に必要とされる能力や条件
直線競馬で勝つために必要なもの、それは絶対的なスピードです。普通の競馬はコーナーがあるために、多少スピードが落ちますが、直線競馬はそれがありません。いかにスタートしてからすぐにスピードに乗れるかが重要になってきます。
とは言ってもスタートからゴールまで、常に全力のスピードで走り抜くのはかなり無理があり、直線競馬でもどこかで息を入れる必要があります。ただ、それはコーナーのあるコースに比べて、ほんの僅かな間だけしかないのです。
息を入れる時間が少ないのに、直線競馬を最初から最後までスピードで押し切れるような馬なのだから、スタミナとパワーの両方が必要だと思われがちですが、それは少し違います。加えて、キレる脚というのも大して武器にはならないと考えています。
1200m戦などで強い馬というのは、逃げ切り勝ちができるスタミナや追い込んでくる力強さ、あるいは最後に鋭く差してくる末脚が持ち味ですが、それらは全て、道中で息を入れられるスピードに落ちる『間』があるからこそ生まれる武器なのです。例えば、先行して流れに乗り、脚を溜めて最後に爆発させる走りというのは、まさにその典型的な例だと言えます。逆に新潟の直線レースでは、『トップスピード⇒瞬間的に息を入れる⇒すかさずトップギアに戻れる』という、とにかく全体的な脚の速さが求められ、道中での力の使い方が大きく異なってきます。
これらを比較してみた場合、1200m戦で追い込んで勝つような馬にはあまり適さず、却ってバテしまい着順が悪くても、常に前々で競馬ができるようなタイプの馬に、この新潟直線1000mコースは合っているような気がします。

■騎手は直線競馬で騎乗する際、どんな点に気をつけているか
僕が特に気をつけていたことは2点あり、まず1つ目はスタートです。これはどんな距離のレースでも言えることなのですが、騎手はレースに騎乗する際、スタートを最も大事に考えています。特にこの直線1000mにおいては、スタートでミスをするとまず勝てないといっていいほど重要なポイントです。もし出遅れてしまったら、どれだけ追いかけてもトップスピードで駆ける他馬には追いつけません。
そして、もう1つは流れに遅れないこと。直線競馬では、逃げ馬以外の馬も必ず先行集団について行き、絶対に前と離されないようにします。ベストの位置は先頭グループ、もし2番手グループになったとしても、前との距離はいつでも捕まえに行ける1~2馬身差以内。それ以上離れてしまっては、よほど展開が恵まれない限り、差し切るのは非常に困難です。
最後方グループから一気に追い込んで勝つことなど、開幕して最初の週の良馬場ではまず不可能。あるとしたら夏競馬2開催目以降、芝が使い込まれて馬場状態が悪くなってきた時だけでしょう。そんな時には、多少スピードが劣る馬でもチャンスが出てきます。馬券的には注意しておいた方がいいかもしれませんね。

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