大阪杯で改めて感じた横山典騎手の凄さ
先週日曜日に阪神競馬場で行われたGⅡ第60回産経大阪杯。
GⅠ級の馬が始動にあたり選ぶことが多く、レベルの高い内容が期待されるため、頭数こそ多くはありませんが毎年とても注目されるレースです。
今年も11頭立てでGⅠ馬が5頭参戦、春のGⅠ戦線に向けてそれぞれどんな競馬をしてくれるのか楽しみにしていました。
そしてこのレースを制したのはGⅠ未勝利ながら2番人気に支持されたアンビシャス。
結果的に上位2~6着を占めたGⅠ馬5頭は力があることをあらためて証明したわけですが、その中で堂々たる勝利をおさめたアンビシャスの力もGⅠレベルにあるということでしょう。
折り合いがカギとなる馬で、これまでに出走したレースでは大抵が中団もしくは後方にポジションを取り、終いの脚にかける戦法で好走していました。
しかし今回アンビシャスの手綱をとったテン乗りの、調教でも跨ったことがない横山典騎手は、好走してきたこれまでの乗り方ではなく、2番手につけてゴール寸前で逃げ馬を捕らえるレース運びをして見事に勝利をあげました。
この乗り方は自ら調教師に進言したようで、以前からアンビシャスの走りを見ては、自分が乗れるものなら先に行くレースをしてみたいと考えていたのでしょう。
しかしたとえ調教師を説得し思い通りの乗り方をさせてもらっても、言葉にした以上はある程度の内容、つまり勝てば最高、または勝てなくとも次につながる今までにない好走という、所謂“結果”を出さなければ、オーナーや調教師の顔を潰すことになり騎手としての信用を失ってしまいます。
それをきっちりと勝ってみせるのだから、いまさらながら横山典騎手の凄さを感じます。
長年の経験で培った騎乗技術は誰にも真似できない彼だけのもの。
調教師も、このベテランジョッキーの腕を100パーセント信頼しているからこそ要望を受け入れ、お前の好きなように乗ってこいと大事な馬を託してくれたのでしょう。
馬の力とジョッキーの腕、そして陣営の努力が最高の結果を生み出した素晴らしいレース内容でした。
2着は昨年の菊花賞馬キタサンブラック。
逃げると予想されたマイネルマクリマを制し、自らハナを奪いレースの流れを握りました。
スタートの出し方から、次に馬を出す動作と、主導権を握るためには当然マイネルマクリマと競っていかなくてはならず、そのように乗れば必然的に馬はかかりやすくなります。
それなのに長手綱で馬を怒らせることなくハナに立てたのは、鞍上・武豊騎手の卓越した騎乗技術があってこそ。やはり上手いですね。
その後スローに落として上がり33.6秒の脚を使い、このまま逃げ切れると思ったのですがゴールまであと少しというところでアンビシャスにクビ差抜かれてしまいました。
ただ十分に能力は発揮できたうえ、次走に向けて大きな期待を抱かせてくれるような良い走りでした。
3着には一昨年の秋華賞・昨年のジャパンCを制した牝馬ショウナンパンドラが入りました。
今回はいつもよりスタートを出していき、中団につけてレースを進めましたが、これは次走マイル戦を予定しているためにそのような乗り方をしたとコメントがありました。
逃げや追い込み一辺倒の乗り方では限界がくるときがやってきます。
レースの幅を広げるためには実戦で試してみないとわからないことも多々あります。
現在出走するレースが大事なのはもちろんですが、今回勝ちさえすれば良いと無我夢中で乗るのではなく、馬の先々のことを考えて騎手はレースに臨んでいるのです。
プラス14キロでいくらか重め残りだった馬体も、次走ヴィクトリアマイルの頃にはすっきりとして、勝ち負けになるほどの見事な仕上がりになっているでしょう。
GⅠの大舞台で、ぜひとも最高の状態で最高の走りを見せてほしいものです。
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