先週の第66回東京新聞杯は5番人気スマートレイアーが優勝。
2年前の阪神牝馬Sを制した実績があり牝馬GⅠの常連馬で、これまでは差し・追い込み脚質を生かして戦って(好成績を上げて)きましたが、今回初めて手綱をとった吉田隼騎手はスタートを出していくとハナに立ってレースを引っ張りました。
しかし無理はせず、馬に全く負担を与えないよう逃げる形。
この吉田隼騎手の乗り方は昨年暮れの有馬記念を制した時のレース運びに似ていると感じました。
アクセルをむやみにふかすことなく馬の持つダッシュ力だけで先頭に立ち、そこからスローに落として自分の形を作り上げるという流れ。
今回の勝利は吉田隼騎手が、自らの騎乗技術により勝ち得たものだと思います。
真面目な性格で若い頃から基礎がしっかりとしたジョッキーでしたが、そこに経験と、何より自信が備わり、余裕ある良い雰囲気が漂うようになりました。
今年は彼ならではの手綱さばきを堪能する機会が多そうなので、競馬観戦がいっそう楽しみになりました。
僕が注目していた1番人気ダッシングブレイズはまさかの競走中止。
レースでは中団を追走し手応え十分の走りで、今の府中の馬場は内側が伸びる傾向があり鞍上の浜中騎手もそれを意識してか内ラチ沿いに進路を取ってレースを進めました。
33秒台の脚を確実に使えて最速の上がりで3連勝してきた現在のこの馬なら、今回のメンバー構成を見れば差し切る可能性がかなり高いと考えましたが、思いのほかレースが流れてゆかずに1000m通過が60.6秒というスローペースに。
そして馬群はダンゴ状態になって4コーナーを回り直線へと向かいました。
浜中騎手は外へ出す意識がハナからなかったようで前にいるエキストラエンドの内を狙っていきましたが、十分な間隔がとれず内ラチにぶつかってコース内の芝へ放り出されてしまいました。
頭一つ分のスペースがあれば大丈夫と思われそうですが、馬群を割って入るのとは違い左側はラチなのでそれ以上インに動けるわけがなく、動いてもらえそうなもう片方、右側の馬と騎手にとってもさらに外に馬が壁となっていては避けたくても避けられないし、人気馬を抜かせるためにわざわざ広くスペースを開けてあげる必要もありません。
馬をまっすぐ走らせるのも騎手の技術なのであまりにもフラつくのは論外としても、必死に追う騎手と夢中で走る馬が多少左右に振れてしまうのは仕方ないことで、今回も決してダッシングブレイズの進路が意図的に塞がれたわけではありません。
レースにおいて、1頭分は通れると判断すれば狭いところでも狙っていきますが、イチかバチかで突っ込んでいく乗り方は危険です。
レースを観ていた関係者は生きた心地がしなかったでしょう。
結果的に馬が軽い外傷で済んだのは不幸中の幸いでした。
確かにレースの流れや内が伸びる馬場を考えると、ダッシングブレイズがあそこから外に出して差し切るのは無理で勝つためにはインを突くしかないのですが、いけるギリギリのところと限界を超えてしまうところ、その境界線を瞬時に判断する冷静さが必要と思います。
あそこで空いているのに最初から突っ込まないで外を回すのは騎手としてありえないレベル、しかも馬によっては外のエキストラエンドを吹っ飛ばしてでも前をこじ開けていくタイプもいて、そうなれば結果的に正解となるため内に進路を取るのは至極当然のこととはいえ、あの場合は馬が躊躇してしまい前を抜けるのは難しいのが一目瞭然、浜中騎手はそこで引く決断をしなければなりませんでした。
開かないと悟った瞬間に勝負を捨てて手綱を引かなければ、運が悪いと馬を殺してしまうことになります。
もちろん自分自身の生命も危険にさらされます。レース全体を見極め、もう少し落ち着いて騎乗できていればと残念でなりません。
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