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2013年5月29日 (水)

最高の舞台で魅せた最高の騎乗。

競馬界の夢、日本ダービー。
春のGⅠレースが続き、聴き慣れたGⅠファンファーレもダービーで流れるものだけは特別に感じられます。何度聴いても鳥肌がたつ思い、今年もしっかりと堪能しました。
第80回日本ダービーを制し、3歳牡馬の頂点に立ったのは1番人気キズナ
鞍上の武豊騎手は5度目のダービー制覇となりますが、これまでで最も素晴らしい騎乗だと思います。彼にしかできない胆の据わった乗り方。ダービーで1番人気馬に跨り、彼のように道中あれだけ落ち着いてじっと乗っていられる騎手はそういません。
勝利の予感は、スタートして1コーナーに入るところ。
距離にしてたった数百メートルの僅かな間に折り合い、楽々と走る姿を見たときでした。
必見なのがスタートしてすぐ、ゴール板を通過する瞬間の武豊騎手の手元です。ぶらぶらとまではいかないものの、手綱をかなり長く持ちハミをかけない騎乗は、馬に対して全くプレッシャーを与えていません。良い位置を取るには、ある程度「馬を出していく」動作、つまり軽くアクセルをふかす状態になりますが、それは馬にハミを噛ませず、リラックスして走らせるための「フワッと乗る」ものとは正反対の乗り方となります。逆の意味を持つこれらの動きを少しの時間で行うのは難しく、それを易々とこなす彼の技術・センスには脱帽です。
ペースがそれほど速くなかったために、仕掛けどころで早めに動き出す判断もさすがです。ここで予感は確信に変わりました。直線で素早く外に出し、十分にたまったキズナの脚を解き放つ。あとはもう存分にその脚を伸ばしてゆくだけです。計ったようにゴール前できっちりと差すあの勝ち方は彼らしくて良いですね。
スタートからゴールまでの全てが完璧でした。
インタビューで「最後に良い脚を使ってくれることはわかっていたので」と話していたとおり、キズナは騎手が上手く乗ってあげれば間違いなく伸びてくる強い馬です。ただ今回、その鬼脚を最大限に引き出せたのは彼だからです。馬の力を信じているとはいえ、あれだけ後方から進めるのは本当に度胸が要ることで、これは武豊という騎手の才能と努力と経験によるものでしょう。大レースで1番人気馬に騎乗し緊張しない騎手はいませんが、その上で冷静にレースを進められる騎手は本当に少数で、たとえば横山典騎手もその一人で、先行グループのインをとることにかけては抜群の上手さを見せます。ただ武豊騎手とは“騎乗スタイル”が違い比べられるものではないのですが、馬の力を出し切るためにこうした秀でた何かを持つことは大きな強みです。勝ちきれない騎手というのは、スタイルというか芯が定まっていないために中途半端な騎乗をしてしまうことが多いような気がします。
スタンド前に上がってくる前に、誰も見ていないところで喜びを噛みしめるように何度も何度もグッと拳を握る武豊騎手は、スマートに手を振るいつもの姿より格好良く見えました。最高のレースです。

そして3番人気2着と、皐月賞に続き勝利を逃したエピファネイア
勝ち馬とは対照的にスタートからハミをがっちりと噛み、鞍上の福永騎手が抑えるのに苦労していて、皐月賞と同じようなレースぶりになってしまいました。馬群に入って壁を作り、馬をなだめるための努力はしたものの、それでも喧嘩を完全におさめることはできませんでした。
3コーナー手前で前の馬と接触しバランスを大きく崩す場面があり、何とか立て直したのはよいのですが、これが結果的にリズムを崩してしまったのではないかと思います。
馬を究極に仕上げると、テンションは普段以上に上がってレースでの折り合いに苦労することがあり、今回のエピファネイアはそれにあたったのかもしれません。ダービーという3歳牡馬にとって大事なレースともなれば、厩舎関係者は最高の出来になるようにギリギリの、いわゆるお釣りがない状態にまで調整してきます。そこまで仕上がってテンションの上がった馬を騎手は乗りこなさなければいけません。
福永騎手には申し訳ないのですが、まだ少し未熟なところがあるように思います。もっと「馬をだます」「スッと抜いてあげる」など意識して感覚を身につけ、自分なりにコツをつかんでいけば、福永騎手らしさが感じられる魅力ある騎乗が見られるのではないでしょうか。ダービージョッキーとなる日を楽しみに待っています。

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