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2013年1月23日 (水)

新ルールが抱える難題を見たAJCC

先週の第54回アメリカJCCは、馬の走りによる勝ち負けよりも、レースにおける裁決委員の判断が注目を集めました。

1位入線したダノンバラードの直線での内側への斜行により、内にいたトランスワープゲシュタルトの2頭が受けた不利。新ルールが適用された今年からは、着順変更の可能性がない場合に審議のランプを点けないことになりましたが、これは昨年までのルールならば降着が当然の妨害行為でした。
被害馬である2位入線トランスワープを管理する萩原調教師と騎乗していた大野騎手が、降着を求める申し立てを行いましたが「2着馬のパフォーマンスが1着馬のそれを明らかに上回っていたとは言えない」という理由で却下されました。
審議のランプを点けるのは裁決委員と呼ばれる人たち。その委員3~4名で、何か異状を感じたときは即座にランプを点け、レース終了後ただちにパトロールフィルムを見て審議に入るわけですが、今回はなぜ、あの場面において「着順変更にあたらない」と「一瞬」で判断できたのでしょう。
被害を受けた馬の脚がどれくらい残っていたのか、1着馬を負かせるだけの力が残っていたのかは、馬が話せたとしても本当のところはわかりません。ゲシュタルトの脚が無かったのは確かでしょうが、2着のトランスワープには十分に脚が残っていたように思います。
もしもトランスワープが、妨害を受けながらもハナ差まで詰め寄るパフォーマンス、それも写真判定で長い時間をかけないとわからないほどのきわどい勝負にまで持ち込んでいたとしたら。その場合は、勝ち馬を上回る脚があったとして降着になるのでしょうか。妨害行為があった時点で審議ランプをつけなかったのに、ゴール寸前でそんな状況になってしまったら、ゴールしてから審議ランプを点けるのでしょうか。
何にせよ、裁決委員の主観的な意見、感性に左右されることになります。観客によって意見が異なっても、野球におけるストライク/ボール判定のように結局は審判員の眼を信頼し任せるしかありませんが、今回が降着にならない(審議にならない)のなら、どんなケースで降着になるのか、被害馬の騎手が落馬するほどのラフプレイであれば降着ではなく「失格」なので、一体、審議の対象となる降着に至る行為がどういうものなのかが、全く想像できなくなりました。

僕は何も、これまでなら降着になっていた行為なのだから今回も審議して降着にすべきと言っているわけではありません。レースを見た誰もが走行妨害と感じる内容で、被害馬も伸びてくるだけの脚を見せたにもかかわらず「審議の余地は無いと即座に断定」してしまうことが不思議なのです。
少し前には「また審議?」と思うほど頻繁に、些細なことでランプが点いていた時代もあり、神経質すぎると思いながらも、パトロールフィルムを公開しJRAの見解を述べることにより、公正競馬という点でファンは納得し、理解を示していました。
走行妨害があった場合、加害馬は被害馬の着順の1つ下になる(騎手に対する制裁は内容の程度により決定される)というわかりやすいルールとは違い、馬の「脚色」という、見る人によって評価が分かれるような曖昧なものを見極めて判定しなければならないので大変でしょうが、ファンが最も気になるその点をわかりやすく伝えていくことが大切です。
今回も、相手が脚を残した2位入線馬ということを考えると、とりあえず審議ランプをつけても良かったのではないでしょうか。そして審議した結果、着順の変更無しというのであれば違っていたでしょう。ルールが変わったから仕方ない、慣れるしかないとはいえ、これまで日本競馬に携わってきた人たちや長年競馬を見ているファンに浸透するまでには大変な努力が必要と思います。

また、元騎手の立場からすると、被害者サイドの救済が無いのもやるせないですね。
加害馬の騎手が騎乗停止などの制裁を受けるのは当然としても、1つのレースが一生を左右してしまう可能性がある競走馬にとって、その損害は取り返しがつかないため、馬主や調教師、騎手などは一体その悔しさや怒りをどうしたらよいのかわかりません。ちなみに、今回は勝ち馬に妨害されての2着でしたが、騎手にとってさらに悔しいのは、妨害された上に関係の無い他馬に差されての3着に敗れること。勝負に水を差されたようで何とも言えない気分になります。
危険騎乗に対し、騎手は非常に神経を尖らせています。たとえ相手が大先輩であっても、被害を受けた後輩騎手が「あれ(走行妨害)は無いんじゃないですか」と文句を言わずにいられないほど、1つのミスが命にかかわる騎手にとってはタブーな行為なのです。
今までは、どうあっても悔しさはおさまらないけれど、それでも加害馬が自馬の着順より下になる降着というペナルティが科せられることで気持ちをどうにか納得させていました。いわゆる“落としどころ”というやつです。
それが無くなると、やったもの勝ちになってしまう気がして、怖いですね。

確かに、脚が全く残っていない馬に対し、走行の妨害をしたとはいえ明らかに脚いろが勝っていた馬が降着になるのはおかしいというのもわかります。今回は重賞での新ルール適用ということで注目され、様々な意見が飛び交いましたが、ルールの変更は、はじめは戸惑うことが多く慣れるまでに時間がかかるものなので、しばらくは見守るしかありません。
ただ、今後同じような事が起きたとき、そのような判断が下されるのか。このアメリカJCCを基準と考えるファンや関係者は多いと思うので、そのときに再びこのルールに対し疑念を抱くような事態にならないようきちんと対処していただきたいと思います。

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