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2012年10月31日 (水)

天皇賞・秋のレース回顧

近代競馬150周年を記念し天皇皇后両陛下の御前で行われた第146回天皇賞。
上位4頭に人気が分散する中、堂々の1番人気に推されたのは、僕達、関係者の間で「影の3歳最強」と以前から言われていたフェノーメノでした。成績が示すとおり(東京3-1-0-0)いかにも府中向きのこの馬。小細工や紛れが発生しにくく馬の能力を最大限発揮できる府中に向くということは、かなり馬に力がある。僕も最有力馬として取り上げました。また距離が向かないわけではなく勝ち負けすら期待できる、フェノーメノにとっては一生一度の菊花賞に出走せずに、歴戦の古馬を相手にする天皇賞に賭けた陣営の意気込みにも感じ入りました。
レースでは4番枠のためスタートから無理なくインを通り、好位をがっちりキープ。直線に向くと外へ出して鋭く伸びたものの、最内を通って抜けてきたエイシンフラッシュの決め手には及ばず2着に敗れました。鞍上の蛯名騎手は位置取りもレースの進め方も全てが完璧な騎乗でした。レース後に「どうして内があんなに開いてしまうかな」とこぼしていましたが、確かにこのレースで2着になった騎手ならば言いたくなりますね。自分が完璧な騎乗で勝利を目前にしながら、他の騎手の甘い騎乗によりかなわなかったとき、単純に力負けしたのとは比べ物にならない悔しさ、未練が残ります。

このレース最大のキーパーソンは、カレンブラックヒルの鞍上・秋山騎手ですね。
シルポートの大逃げは度外視し、実際にレースの流れを作っていたのは秋山騎手。3番手以降は絶対に自ら動くことはないので思い通りの展開に持ち込めますが、シルポート自体G1にしては決して速くないペースで逃げていたので、大きく離れた2番手以降は遅いくらいでした。カレンブラックヒルはこれまでのレース同様、スッと2~3番手を取りにいったまでは良いのですが、2番手の自分がラクに行けるペースというのは、それより後ろに行く馬たちにとっても脚をためやすい大歓迎の流れということ。できればあとほんの少しだけ前に出して、他馬に脚をためさせない程度に、それでいて自分の馬の脚を使いきらないようなペースで引っ張っていけば良かったかなと思いました。
ただ、前を行きつつ後ろの馬も抑えて走るのは、技術的にも精神的にも非常に難しい(だからこそ、逃げの名手と呼ばれる騎手が生まれるわけですが)。慎重かつ大胆な騎乗が求められますが、今回の秋山騎手は、5連勝中、さらに前走のG1馬たち相手に完勝したカレンブラックヒルを大事に思うあまり慎重に乗りすぎた感じ。
あと、シルポートも今回のレース結果に大きな影響を与えました。最後の直線であれだけ内を空けていたのは、逃げ馬としては珍しいかもしれません。もしもシルポートが内にピタッとつけて走っていれば、カレンブラックヒルが直線でスピードが落ちたシルポートとの衝突を避けて外へ出すことは無くそのまま真っ直ぐ走れて、エイシンフラッシュが内から抜け出るのは無理でした。またカレンブラックヒルも他馬が脚を十分にためられないペースで進めていたら、エイシンフラッシュはあれほど鋭く伸びてこられなかったでしょう。
つまり今回、フェノーメノは勝てるパターンだったにも関わらず、本来勝てなくても仕方ない位置のエイシンフラッシュに敗れてしまったわけで、それがレース後のデムーロ騎手の「内が空いたのでラッキーでした」と、蛯名騎手の「何で内が空くかな」という言葉につながるのです。
とはいえ競馬に「もしも」は禁句。馬の強さだけではなく、他の要素によって負けることもあります。シルポートもカレンブラックヒルも自分の競馬をしただけで、ミスと言えることは何一つしておらず責められません。運が僅かにエイシンフラッシュへ向いた、ただそれだけでしょう。フェノーメノの次走は、馬に問題がなければジャパンカップとのこと。馬の力と蛯名騎手の腕を僕は信じて疑いません。好勝負を期待しています。

さて優勝したエイシンフラッシュ。
鞍上がM.デムーロ騎手に決まったと聞いた時からずっと、その存在は頭から離れませんでした。馬の強さ以上に騎手に魅力や怖さを感じる、そんな騎手はそういません。
6枠12番と外寄りでいながら、スタート後じわじわと内へコースをとり、向正面に入ったときにはすでに内ラチ沿いにいました。ここが彼の上手いところ。
普通この枠から馬なり、もしくはレースの流れなりに走ると、スタート後すぐに現れる2コーナーで遠心力により外に振られ、向正面に入るときには馬場の4分・5分どころを走る状況になります。かなり意識して乗らなければあのポジションをとることは不可能。プロの騎手としてレースに対する意識の高さは素晴らしいと思います。日本にも蛯名騎手や横山騎手、武豊騎手などが高潔でプロ意識の強い騎手はいるものの、そう多くはありません。
そして前に馬をおいて壁を作っておき、完璧な折り合い。その場面を見た瞬間、この馬がフェノーメノの相手だと直感しました。
エイシンフラッシュもデムーロ騎手に導かれ、ダービー馬の名にふさわしい見事な走りを見せてくれました。歴史ある天皇賞、それも7年ぶりの天覧競馬での勝利により、再びその名を高めましたね。
ゴール後に下馬し、天皇皇后両陛下へ最敬礼をするデムーロ騎手は、まさに誰もがイメージする騎士そのもの。あれは日本人騎手はしない、というより想像すらできません。JRAの騎手は検量室前で「下馬」の声がかかるまで、馬の故障などアクシデント以外で下馬することは許されないと徹底した教育がされているし、もともと一般的な日本人にとってあの姿は馴染みが薄く、もし行ったとしても不自然な姿になるでしょう。欧米人ならではのカッコ良さでとても絵になっていました。
天覧競馬といえば、7年前の天皇賞をヘヴンリーロマンスで制した松永騎手の一礼もじつに清々しく、厳かな空気に包まれた印象深いものでした。どちらが良いというのではなく、両陛下に対する想いを伝える彼らの姿が胸を打つのでしょう。
競馬ファンとして、日本人として、忘れられないレースとなりました。

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