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2012年8月

2012年8月29日 (水)

新潟2歳Sのレース回顧

新潟競馬も今週でラスト。
この新潟の最終週になって、完全に夏が終わったことを実感します。
僕が現役の頃も徐々に人数は減っていたものの、夏の間中ずっと新潟に滞在していた騎手はまだまだいて、仕事とはいえ、やはりバカンス気分になり、普段暮らしている茨城とは違う生活を楽しんでいました。夏休み中ということで、家族とウィークリーマンションなどを借りる騎手もいましたしね。そして新潟開催が終わり秋の中山を迎えると、再び感覚を切り換えて日常へと戻ります。現在は滞在する騎手はほとんどおらず、自家用車か新幹線で毎週通うようになったので普段と変わらない感覚でしょうが、僕も含め当時を知るベテラン騎手などは、夏の滞在先の思い出をたくさん持っていると思います。

さて昨年までは夏の新潟を締めくくるレースだった新潟2歳S。今年から新潟記念と日程が入れ替わったことに多少の違和感はありますが、きっとすぐに慣れるでしょう。
優勝は松岡騎手騎乗のザラストロ
レースは流れが速く、前を行く馬たちには厳しい展開となりました。実際、勝ったザラストロが後方3番手、2着ノウレッジが内々の中団やや後ろと、2頭ともに後方に位置して脚をためるレース運びをしましたね。
また、高速馬場で有名な新潟競馬場は馬場状態がとても良いのですが、そんな良い馬場でも騎手は皆、直線ではさらに良いところを求めて外へ持ち出し追い比べをします。それが今回のレースでは、内側に馬群が集まるという珍しい光景が見られました。そんな中、セオリーどおり馬群の大外に持ち出したザラストロが温存していた末脚を一気に解放し、鮮やかな差し切り勝ちをおさめました。道中と直線それぞれの『位置取り』というものが、レースにおいていかに大きなものであるかがわかります。
ザラストロは展開が向いたとはいえ、2歳の現時点であれだけの脚はそうそう使えるものではありません。他馬と比べても完成度が高いと思います。

このレースで最も印象に残ったのは、2着ノウレッジの鞍上・蛯名騎手の騎乗(技術)です。 直線に向くと内ラチ沿いから追い出し、内側からステッキを数発入れたところ、馬がフラッと外側にヨレたため、すぐさまステッキを外に持ち替えて外からまた数発。と、今度は内側に寄るので、またまた持ち替えたステッキで内から叩く。騎手としてこの鞭の使い方は当たり前ですが、わかっていてもやらない、または出来ない騎手はいます。
「馬をレースで真っ直ぐ走らせる」これは基本中の基本。特に若い馬は、後々のことを考えてレースでは騎手がしっかりと導いてあげなければなりません。鞭の素早い持ち替えなどは長年の経験で技術を磨いてきたからとも言えますが、やはりずっと意識して続けてこなければ、その技術も身につきません。基本を忠実に守り技術を磨き、何より馬のことを考えて最良の騎乗をする蛯名騎手の意識の高さに感銘を受けました。
2着に敗れはしましたが、ノウレッジにとって次につながるとても良いレース内容でした。

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2012年8月22日 (水)

札幌記念のレース回顧

先週行われた札幌記念。それぞれが目標とする秋の大舞台に向けて、実績馬・注目馬たちが動き始めました。
優勝は単勝4番人気の6歳牝馬、フミノイマージン
これまでに挙げた重賞3勝全てに騎乗した太宰騎手が3走ぶりに手綱をとりました。
後方待機で追走し、3~4コーナーからは外をマクり気味に自ら動いて、直線では断トツ1番人気のダークシャドウを差し切り、1/2馬身差をつけてゴール。
勝因は、ハイペースになりこの馬の持ち味である瞬発力が活かせる流れになったことでしょう。
「前がゴチャついていたので後ろから行こうと考えた」という太宰騎手の作戦が見事にハマッた感じですね。展開が味方した部分は大きいものの、それだけでは勝ち切れないのが競馬です。多くの重賞レースで鍛えられた走りには、さすがと思わせる力強さがありました。

1番人気で2着に敗れたダークシャドウ。
鞍上の福永騎手は、2~3番手につけて前の手応えをうかがうという、強い馬に騎乗する時のお手本のような騎乗をしたと思いますが、やはり勝たなくては意味がありません。
敗因はおそらく、向正面あたりから2番手に上がっていき、しかも逃げ馬にクビ差くらいまでに迫っての追走だと思います。
速いペースで進む中、馬に息が入らなかったのではないでしょうか。
1コーナーで3番手につける形は、単勝1.7倍の馬に乗るには理想的でしたので、できればそのまま直線まで向かってほしかったですね。マイネルスターリーが外から上がってきたときに、抜かせたくなかったのか、一緒にスピードを上げてしまった。どっしりと構えて、先に行かせる余裕を見せてもよいし、それだけの力がダークシャドウにはあります。まるで逃げ馬のアリゼオだけが相手のような競馬をして、直線に入ってすぐに先頭に立つなど、トップジョッキーとして多くの経験を積んだ福永騎手らしからぬ、少し焦りを感じさせる騎乗でした。
あの展開でズルズルになることなく、最後まで押し切れそうな粘りを見せてくれたダークシャドウの強さには感心しました。久しぶりのレースでしたが、順調に夏を越せたようで素晴らしい出来ですね。万全の態勢で挑む秋のGⅠ戦線が楽しみです。

3着は昨年の春の天皇賞馬ヒルノダムール。前走の今年春の天皇賞は11着とふるわなかったものの、これまでの戦績を見ても軽視はできず2番人気に支持されました。休み明けで今回のレース内容なら、秋には良いレースをしてくれそうです。
鞍上の藤田騎手はダークシャドウをピタリとマークし、決め打ちのレースをしました。仕事人・藤田騎手らしい味のある競馬に、思わず頬が緩んでしまいました。

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2012年8月16日 (木)

関屋記念のレース回顧

夏の新潟競馬は2開催目に入りました。
先週のメインレースは関屋記念。改修後の2001年から今まで、1分33秒を越える勝ち時計が無いほどのスピード決着になるマイル戦です。

今年の優勝馬は、内田騎手騎乗の4歳牝馬ドナウブルーです。3歳時は好走するものの、牝馬3冠レースには権利が得られず出走できませんでしたが、今年の牝馬2冠を制したジェンティルドンナの全姉であり、その素質はかなり期待されていました。4歳になった今年はグングン力をつけ、京都牝馬Sで重賞勝ちをおさめると、GⅠヴィクトリアマイルでも2着に入るなど、牝馬同士のマイル戦では頼もしい存在へと成長しました。

今回は牡馬が相手とはいえ目を引くほどの実績馬は見当たらず、また最近の好調ぶりもあっての1番人気でしたが、見事な勝ちっぷりでしたね。
ゲートを良いタイミングで飛び出すと2番手につけて追走、前半は流れが緩く理想的な展開。最後はドナウブルーと、すぐ後ろの3番手で競馬をしたエーシンリターンズの2頭が直線残り400mあたりから抜け出して叩き合い、ゴール前はかなりきわどい勝負となりました。内田騎手の「2回差されて2回差し返した」との言葉通り、最後の最後にグイッと伸びてクビ差の勝利。すごく根性のある馬ですね。
結果、2001年マグナーテンの1分31秒8を0.3秒上回る1分31秒5のレコードタイム。
後半の上がり3ハロンが11.1秒、10.4秒、11.3秒ですが、前を行く馬に上がり32秒台で走られてしまっては、後方からのレースをした馬はお手上げ。厳しすぎる展開です。
あらためて新潟競馬場芝コースのコンディションの良さを感じましたが、こんなスピード競馬をした反動がこないのか、馬の調子が少し心配です。

エーシンリターンズは、本当に惜しい2着。
鞍上の北村宏騎手の騎乗はとても上手でした。内枠を利してインにつけると、前を行く1番人気の勝ち馬から絶対に離されないようピッタリとマークし、じつにソツの無い乗り方をしました。相手はこの馬ただ1頭と考えていたような、僕が大好きな決め打ちの騎乗です。
仕掛けるタイミングも絶妙。抜け出してから全く衰える気配の無い伸び脚は、普通ならドナウブルーを突き放して勝ってもよいほどです。テン乗りながら完璧な騎乗だったと思います。完全に勝ちパターンだったにもかかわらず敗れたのは悔しいでしょうね。
まだ重賞勝ちはありませんが、桜花賞3着の実績からも能力の高さは疑いなし。次走はサマーマイルシリーズ最終戦の京成杯オータムハンデを予定しているとのこと、今の調子を維持すれば好走が期待できそうです。

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2012年8月 9日 (木)

レパードSのレース回顧

真夏の新潟競馬2連続開催もあっという間に半分を終えました。
先週日曜日のメインレースはダートの重賞・レパードS。今年で4回目とまだ歴史は浅いものの、クラシックとは違うダート路線を進む3歳馬にとっては、価値あるものです。
ジャパンダートダービーやユニコーンSなどの3歳重賞を経て出走してきた実績馬と、夏になりグングン成長し好調子の馬が白熱の戦いを繰り広げる、難しくも面白いレース。
また馬だけでなく、昨年(優勝したボレアスに騎乗の)武豊騎手が来場し大いに盛り上がったように、普段は札幌や小倉を主戦場にするため新潟競馬場で騎乗する機会が少ない関西の人気ジョッキーが見られるとあって、ファンにとっても、レパードSは出来て良かった重賞レースだと思います。

今年の優勝馬は、ジャパンダートダービー5着の実績から2番人気に支持されたホッコータルマエ。7枠12番の外めの枠でしたが、鞍上の幸騎手はスタート後すぐに数度の出鞭で馬に気合を入れて前へつけ、その後の1コーナーをスムーズに回りました。ここが上手い。本当に彼はソツのない騎乗をします。流れも位置取りも理想的で、これで負けたら相手を褒める以外にないというレース運びでした。
幸騎手は、端正な顔立ちと穏やかな雰囲気でファンから熱い支持を得ている関西リーディング上位常連の人気騎手。実際に会って話してみても柔らかい物腰の温厚な青年で、僕も彼にはかなり好感を持っています。JRA年間騎乗回数1008回の記録を持ち、毎年あれだけ安定して多くの騎乗馬を集めることができるのは、関係者に愛される彼の人柄によるところが大きいでしょう。もちろん、期待に応えられるだけの高い騎乗技術を持っているのも大きな魅力で、自分が馬主ならぜひ任せたいと思う騎手ですね。
新潟参戦は年に1度あるかどうかですが、過去にはナリタクリスタルやダービーレグノで新潟記念を勝ったこともある幸騎手。今回のレパードS勝利でも新潟のファンにその存在を強く印象づけたのではないでしょうか。

2着にはナムラビクター
鞍上はこちらも関西の人気ジョッキー、和田騎手です。名馬テイエムオペラオーとのコンビで一時代を築いた彼ももう35歳のベテランになりました。大舞台で培った精神力と騎乗技術で大きく成長、幸騎手と同じく高いレベルで安定した成績を維持しており、安心して見ていられる騎手の1人です。
レースは勝ち馬ホッコータルマエをマークする形で追走、直線の伸びには勢いがありクビ差まで詰め寄るも僅かに届かず。3着馬に差をつけて抜け出した2頭のゴール前の叩き合いはとても見応えがありましたね。上手く騎乗したと思いますが、追い出してからの反応が少しだけ鈍く見え、その分だけ届かなかったのかもしれません。

そして1番人気の関東馬イジゲンは3着に終わりました。
ゲート入りで嫌がり、ようやくスタートを切ったと思えば直後に躓き、後方4番手からのレースになってしまいました。スタート地点が芝になっているダート戦もありますが、ダートからのスタートの場合、馬が躓きやすいので騎手はとても気をつけて乗らなければなりません。それでもなお躓いたり、馬がひっくり返り落馬してしまうシーンをよく見かけます。今回の内田騎手も、スタートには気をつけて騎乗したようですが、そうそう思い通りにいかないのが競馬。仕方がないと気分を切り換えるしかありません。
後手に回り後方からの競馬になったイジゲンは、3~4コーナーでも外を回らざるを得ない形になり、その頃には手応えが怪しくなっていました。それでも直線ではメンバー最速の37.1秒の脚を使えるのですから、本当に能力が高いと思います。勝ち馬と対照的にスタートや位置取り、展開、全てが上手くいかず並みの馬なら凡走して当然の内容で、よく走りぬいたと思います。

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2012年8月 1日 (水)

クイーンSのレース回顧

先週の土日に行われた平場の重賞は1レース、札幌競馬場のクイーンSのみでした。
優勝は1番人気アイムユアーズ。昨年夏からオークスまで好走を重ね、今年の牝馬クラシック戦線を大いに盛り上げた実力馬が、見事にファンの期待に応えてくれました。
およそ2ヶ月ぶりの出走で馬体重は24キロ増。しかしレースでは中団外めを追走し、いつでも抜け出せる手応えをもったまま、鞍上の池添騎手がゴーサインを出すと後続を引き離して完勝。古馬と3歳馬の力差を考慮した斤量が設定されているため、ほとんどのメンバーが55キロの中、アイムユアーズは52キロと好条件での出走でしたが、やはりどれだけ軽い斤量だったとしても、馬の状態が良くないと勝てないと思います。馬体重の増加は成長分に加え、春の激戦の疲れがすっかり取れた良い状態だったということですね。これだけ行き届くケアをする牧場・厩舎スタッフが、これからは秋に向けてさらに慎重に、万全の態勢で仕上げてくるでしょう。楽しみです。
池添騎手は昨年騎乗したアヴェンチュラに続くクイーンS連覇ですが、その後アヴェンチュラが制した秋華賞では他馬に騎乗していました。ぜひ今年の秋は、アイムユアーズとともにGⅠ勝利の美酒を味わってほしいものですね。

2着には10番人気ラブフール
最後方からの追走で、直線では上がり33.7秒の脚を使って突っ込んできました。ねっとりと絡みつくような感覚があってパワーの要る洋芝では、そうそうこれほどの上がりの脚は使えません。それだけラブフールにこの馬場が合っていたか、または鞍上の丸田騎手がいかに上手に脚をためて騎乗していたかでしょう。
今回のような最後方からの競馬は、騎手にとって結構乗りやすいものです。レースの流れを掴みやすいし、全ての馬と騎手の動きがひと目でわかるからです。早めに仕掛けるか、丸田騎手のように最後の最後まで脚をためて直線だけに賭けるか、前の馬の手応えを見て選べるのも利点です。

ただ、最後方のレースには、難しい点も1つあります。それはコース取り。
当然後ろから行けば目の前に馬群があるわけで、どうしても外を回すことになりますが、あまりに大外に持っていくとロスが多いので、隙間が見つかれば割って入るとか、思い切ってインを突く時もあります。そのあたりの判断が難しいところですね。また、追い込み馬はハマると強い反面、不発の時もある極端なレースぶりになりがちですが、騎手はこういう様々なタイプの馬に騎乗し、経験を積んで判断力や技術を磨くわけです。丸田騎手もかなり精神的に鍛えられているのではないでしょうか。どんどん乗ってさらに成長してほしいものです。

注目していたオールザットジャズは5着に終わりましたが、レースの進め方には全く文句ありません。藤岡佑騎手の上手に立ち回って少しのコースロスもない「インべったり」の乗り方は、僕が好きな騎乗です。あの乗り方は自然と脚がたまるのです。だから直線に向いた時には、突き抜けてくる手応えでしたが案外でした。久々のレースで伸び切れなかったのでしょう。次走は期待してよいと思います。

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