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2012年7月

2012年7月26日 (木)

アイビスサマーダッシュのレース回顧

国内で唯一の直線レース重賞、アイビスサマーダッシュが新潟競馬場で行われました。
優勝したのは5歳牡馬のパドトロワ。このレースを制した牡馬はこれで2頭目、僕が2006年にカルストンライトオで優勝して以来じつに8年ぶりのことです。
パドトロワは7番人気ではありましたが、能力が本格化した昨年は春から好調で、GⅠのスプリンターズSでも2着にくるほどの実力馬です。今年は人気になりつつも思うような成績があげられなかったため、この評価だったのでしょう。

レースは好スタートから3・4番手追走、残り50mから抜け出して2着馬に1馬身半差をつける完勝。鞍上の安藤騎手の手応えを見ても、とても楽な様子でした。
直線1000mに出走するのは、いずれもスピードが自慢の馬なので、騎手が手綱を「持ったまま」で前(を行く馬の動き)を見ながらの追走という場面はあまり見られません。というのも直線の短距離レースでは、たとえ好位につけていたとしても、先行する馬の脚いろが衰えることは滅多にないために仕掛けのタイミングを待っていても仕方が無い。自然と早めに騎手の手が動いて、前を行く馬を捕らえにかかるからです。今回の安藤騎手みたいなじっくりと構えた騎乗は、そうそう出来るものではありません。
直線レースと、コーナーがある他のレースとの一番の違い。
それは「脚をためる」ことをほとんどしない点でしょうか。
確かに、距離が短いとはいえスタートからゴールまでを、息を付く暇も無く追いっぱなしでは馬がもたないし、そんな単純なことで勝てるほど競馬は楽なものではありません。脚をためるために抑えたり、それなりに息を入れる時間もとったりします。ただし、他のレースに比べると、ためる時間は極めて短いですね。
安藤騎手がためていた時間は、直線レースにおいてはかなり長い方だと思います。そのおかげで、追い出してからの伸びが目を見張るものになったのではないでしょうか。
もちろん、この戦法はどの馬にも、どの騎手にもできるものではありません。
今回のように脚をためるには、好位につけて、しかも絶対に前と離されずに進められるほどの脚があって、なおかつ手応えが十分にないといけません。これが出来たのは、パドトロワの調子が相当良かったということでしょう。
また、馬がどれほど好調でも、その能力を心から信じていたとしても、このスピード勝負の直線競馬では落ち着いた騎乗をするのは慣れていないと難しいと思います。冷静な判断と肝の据わった乗り方は、さすがベテランの安藤騎手といったところでしょうか。
直線競馬でありながら、まるで1200m戦を観ているような不思議な感覚でした。

僕が注目したハクサンムーンは4着。
直線競馬の特徴は、データが示すとおり外が有利です。ハクサンムーンは2枠3番の内枠に入ったことで、やはり最後には脚が止まってしまいました。鞍上の石橋脩騎手は、外に出していく思い切った騎乗をするのも一つの手だったのでは…。持ち味であるスピードは存分に生かせていただけに、レースの内容が少し惜しいと感じました。

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2012年7月18日 (水)

函館記念のレース回顧

夏の始まりを告げる北海道シリーズ、その前半戦である函館開催が最終週を迎え、最終日の15日は、数々の名馬が優勝した伝統のレース・函館記念が行われました。最近は七夕賞に続くサマー2000シリーズ第2戦として定着してきました。

優勝は4番人気トランスワープ
鞍上の大野騎手は「もっと前々で競馬をしようと考えていた」とレース後に語りました。逃げたレースで勝ったり2~3番手の競馬で好走を続けてきた馬なので、当然そのように乗るつもりだったのでしょうが、今回はやはり重賞(トランスワープは重賞初出走)ということもあり他の馬も速く、自然と中団よりやや後ろの位置になってしまいました。自分がイメージしていた位置取りができなかったためか「少し焦った」とのことですが、その後の騎乗には全く動揺した雰囲気などは見られず、落ち着いていましたね。

確かに競走馬には、ペースなど関係なくとにかく逃げて持ち味が出せるタイプや、逆に後方にいて脚をためるだけためて最後の直線で爆発するタイプなど個性的な馬はいますが、レースのペース次第でいくらでも展開は変わるので、どの位置にいようがあまり関係ないと僕は思います。大事なのは、余計な動きをせずにロスの無い騎乗を心がけて、不利も受けることなく、仕掛けどころまでいかに脚をためていられるかどうか。
トランスワープは2枠3番という枠も良く、道中は内側を進んでロスの無いコース取りができました。また、焦らずにどっしりと構えた大野騎手の騎乗により、脚を十分にためることができたことで最後の素晴らしい伸びが生まれました。直線に向いてからの外へ出す動きも非常にスムーズで、技術の高さが感じられます。本当に良い騎乗でした。

さて今週は新潟競馬場でアイビスサマーダッシュがあります。
日本で唯一の直線レースが始まり、もう11年が過ぎました。それまでは、どれほど短い距離のレースでも3~4コーナーはあって、後ろから行けば前の馬が邪魔であったり外を回して距離ロスが出たりと、短距離ゆえの難しさを騎乗するたびに感じていたものです。
この直線1000mのコース新設以降は前を行く馬が気にならず、挟まれることも少なくなって、馬の本来の力を出し切る真のスピード競馬ができるようになりました。とてもシンプルで騎手にとって最も乗りやすいレースだと思います。ただ、どのレースでもそうなのですが、特に直線レースではスタートの僅かな差が命取りになるので、馬をゲートから出すことに全神経を集中させます。
僕は、直線レースが始まって何週か経った頃から自分なりのコツを掴み、直線以外のレース時とは違うやり方でスタートしていました。いつもとは違う手綱の長さ、こぶしの位置、そしてスタートが切られた瞬間の手の動き。これらを実行することで馬に全く負担がかからずにダッシュがつくのです。同じようにする騎手は、まだ見たことがありませんね。誰かに伝えておけばよかったかなと思います。

毎年アイビスサマーダッシュが近づくと「今年こそカルストンライトオの持つレコードタイムが破られるのではないか」と少々ドキドキします。梅雨時期に行われていたこのレース、今年は1週遅くなり良い馬場状態で迎えられそうで、そろそろ本当にレコードを更新されるかもしれません。やはり一人の騎手として名が残るのは名誉であり、それができるだけ長く続いてくれることを願ってしまいますけどね。

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2012年7月12日 (木)

七夕賞のレース回顧

先週は第48回七夕賞が行われました。
サマー2000シリーズの初戦でもあるこのレースを制したのはアスカクリチャン。16頭立ての14番人気馬の激走により夏の福島競馬は幕を閉じました。

レース当日は快晴に恵まれたものの、前日までの雨で馬場はゆるくなり、力のいる状態になっていました。騎手は基本的にコースロスの出ない内側を選んで走り ますが、内が悪くなれば徐々に外へ外へと出していきます。それはもちろん、降雨で馬場が荒れたり開催が進むにつれ傷んでくる芝であったり、とにかく外が伸 びる展開になるからです。メンバー構成や自馬の脚質など様々な要素を組み合わせ、どの位置取りで最終的にどこを通ってくるかなど、絶えず考えながら騎乗し ています。

優勝したアスカクリチャンの鞍上・内田騎手は荒れた内側を避け、かといって距離や体力を消耗させる大外まで出すことはせずに、内側ギリギリの良いところで上手く走らせていました。この進め方が勝因だったといえるでしょう。
もうひとつは管理している須貝調教師の手腕もあるかもしれません。今年の皐月賞馬ゴールドシップもこの厩舎ですが、管理馬に対する丁寧な仕事ぶりが伝わっ てくるようです。きっと厩舎全体の雰囲気が良いのでしょうね。開業から4年目の今年になり初めて重賞勝ちをおさめ、この七夕賞ですでに重賞は3勝目。この 先が楽しみな厩舎です。

2着は岩田騎手騎乗の1番人気馬トーセンラー
出走メンバーを見ても格は上だと思いますが、この馬はパンパンの芝で時計の速いレース展開がベストであり、今回の福島コースはいかにも不向き。道中も手応えが怪しく、1番人気らしくない追走をしていたため、惨敗も覚悟していました。
ところが3・4コーナー中間あたりで、岩田騎手が懸命に押していき、直線で馬場の良い大外まで持ち出すと、ハミを取りそれまでとは全く違う走りを見せ、一 気に伸びてきました。この岩田騎手のコース取りも良かったと思います。あのまま大外に出さずに内にこだわっていたなら、おそらく掲示板にも載らなかったで しょう。やはり岩田騎手のレースにおける勘というか勝利につながる嗅覚はさすがです。
差し切ったかと思われる勢いはありましたが、僅かに届かず2着。これはもう運が無かったとしか言いようがありません。次走でも当然上位人気でしょうし、その期待に応える力もあります。次に向けて好調をキープしてもらいたいものですね。

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2012年7月 5日 (木)

先週の重賞レース回顧

先週は福島競馬場で第61回ラジオNIKKEI賞が行われました。
僕がこのレースを勝ったのは、まだ「ラジオたんぱ賞」だった2000年。福島が改修工事のため東京競馬場で開催された年です。3歳馬が出走するレースだというのは当時から変わりがありませんが、現在はハンデ戦になっていて予想するのが難しくなりましたね。

2歳重賞から春のクラシックトライアルレース、そして牡馬2冠レースを経てきた馬もいれば、3歳になってからデビューし、500万や1000万条件戦を勝 ち進んできた馬もいます。実績を重んじるか、勢いを買うか。強いがトップハンデでは苦しいか、力不足に感じるが軽ハンデは捨てがたい等々・・・。ハンデ キャッパーの方々が全部をひっくるめて公正に競馬が行われるよう斤量を決定するわけですから、本当に悩みますよね。

今年のラジオNIKKEI賞は、2番人気ファイナルフォームが優勝し、1番人気ヤマニンファラオは2着。ともにハンデは軽すぎず重すぎず、これまでもそれぞれのクラスで好走を続けてきたこの2頭のワンツーは納得の結果です。
ファイナルフォームは、東京競馬場の500万下に出走し勝ち上がってきました。直線で外に出し一気に伸びて先頭に立ったその前走のレースぶりから、府中の ような長い直線コースをもつ競馬場でこそこの馬の良さが引き立つのではと考えていましたが、小回りの福島競馬場でも十分に、持ち味である瞬発力を生かした 勝ち方でした。

鞍上の戸崎騎手はこの日、堀厩舎所属馬5頭に騎乗し4勝。スポット参戦でこれだけ勝たれてしまっては、他のJRA騎手はさぞかし悔しい思いをしていること でしょう。堀厩舎には走る馬が多いのは確かですが、上位人気馬だから100%勝てるとは言えないし、人気が無くとも展開次第で勝つこともあります。それで もこれだけきっちり結果を出す戸崎騎手は、勝利に対する想いが誰よりも強いのかもしれません。毎週騎乗する機会があるJRA騎手とは違い、地方競馬所属の 彼らには限られた日のレースのみですが、その与えられたレース1つ1つに全力をもって騎乗しているのがわかります。その気迫はどこから来ているのか、とて も興味深いところです。これからもJRAのレースで騎乗する機会は多いでしょうから、注目しなければならない存在ですね。

中京競馬場では第48回CBC賞がありました。
優勝はマジンプロスパー、馬主はかつて大魔神と呼ばれた元プロ野球選手の佐々木氏です。 2番手から直線で楽々と抜け出しゴール。重賞2勝目を挙げました。サマースプリントシリーズのチャンピオンを狙っているとのことですが、今回のレースぶり なら可能だと思います。ただ夏の暑い中でのレースは馬の体力・精神力を非常に消耗しますから、(気が早いかもしれませんが)秋のスプリンターズSに向け て、いかにサマーシリーズの疲れを残さないように調整し、好調を維持してゆくか。厩舎スタッフの皆さんの腕の見せ所ですね。

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