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2012年5月

2012年5月31日 (木)

日本ダービーのレース回顧

競馬関係者なら誰もが夢見るレース、日本ダービーが、晴天の東京競馬場で行われました。

今年はディープブリランテが優勝し、デビューからずっと騎乗し挑んできた岩田騎手とともに夢と名誉をその手に掴みました。
前が止まらない高速馬場が味方したのもありますが、それを計算して騎乗した岩田騎手はさすがです。4番手から直線に向くと、逃げ馬を捕らえて早めの先頭に。少し早いだろうと思いつつ観ていましたが、猛追するフェノーメノをハナ差凌いで1着でゴール。普段なら、これほど早仕掛けはしないのでしょうが、ダービーの重圧があったのかもしれません。ただ、ゴールに向かう岩田騎手の、遠目からでもわかる馬上での激しい追い方には、何が何でも(脚を)もたせてやるという気迫が満ち溢れていました。
岩田騎手は勝ちに向かうための嗅覚というか、勘が非常に鋭いと思います。いつも気付くと良い場所にいたり、一見不利なようでいて結果的にベストな展開であったり。「持ってる」騎手というのは彼のような人を言うのでしょうね。

2着はハナ差届かず、蛯名騎手騎乗フェノーメノ。
馬は完璧に仕上がっており、レース内容も文句なしの素晴らしい競馬でした。
人馬一体になりベストを尽くしましたが結果は2着。ゴール直後に勝ち馬に並びかける勢いだけに、いっそう悔やまれます。蛯名騎手が「悔しすぎる」と言いましたが、その気持ちは痛いほどわかります。きっと何年も、もしかしたら一生、この日のことを思い出しては悔しさがよみがえるのでは。26年目のベテランである蛯名騎手、あと何年現役を続けるかわかりませんが、ぜひダービージョッキーとなって、この悔しさを何十倍もの喜びにかえてほしいと思います。

注目馬であったワールドエース&福永騎手は、高速馬場を意識したのかいつもより前目の中団待機の競馬をしました。位置取りは悪くなかったと思いますが、期待していたほどの切れは感じられず、直線こそ良い脚は使っていたもののすでに勝負はついており4着どまり。池江調教師が仕上げが甘かったとコメントしましたが、これほどの調教師がダービーという晴れ舞台で緩ませるはずもないので、多分、人気は必至のレースに際し、極限まで仕上げることはせず大事に扱っていたということでしょう。
今年のダービーも見応えは十分だったと思います。出走した皆の勝ちたいという気持ちが伝わるようなレースでした。

最近、騎手や調教助手を目指す若い人の間では、ダービーよりも世界を相手に戦うジャパンカップ、または年末のドリームレース有馬記念を勝ちたいという考えが増えてきました。確かに大いに盛り上がる大舞台ですが、やはりダービーは関係者にとって特別なもの。
若手騎手も最初のうちは、ダービーは数あるGⅠレースの1つ程度の意識を持っているとしても、師匠である調教師や厩務員、生産者や馬主など、周りの人たちのダービーに対する想いを知り、ダービーに臨む先輩騎手たちの意気込みを感じ、そしてダービージョッキーに輝く騎手とその陰で悔し涙を落とす者を目の当たりにし、徐々にこのレースの重みを理解します。そしていつしか憧れを抱くようになるのです。
GⅠレースをいくつも制している岩田騎手ですらゴール後に泣いていました。感極まって涙するようなレースなど、そうあるものではありません。
レースを観ていて、思わず口に出してしまいました。
「あ~、ダービーで乗りたいな~。」
…引退して何年も経っているというのに、あの空気を味わいたくなる。
やっぱりダービーって、良いですね。

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2012年5月24日 (木)

オークスのレース回顧

第73回オークスは、優勝ジェンティルドンナ、2着ヴィルシーナ、桜花賞と同じワンツーフィニッシュとなりました。
レース展開は、戦前に予想されたものとは異なり、3歳牝馬の2400m戦としては珍しく速い流れになりました。まだ完成されていないこの時期の3歳馬、そのほとんどの馬が初めてとなる長い距離のレース。脚や体力がどの程度通用するかは未知の部分が多く、厳しいレースを望まない騎手たちは様子を見ながら乗るため、ゆったりと進みがちですが、前を行く2頭が競った結果この速さとなりました。

僕が気になっていたアイムユアーズは、厳しいペースの中、好位にとりついて上手く流れに乗っていました。直線に向くと一度は先頭に並びかける勢いがありま したが、前半のペースで体力を消耗したようで、力尽きてしまいました。鞍上のウィリアムズ騎手はアイムユアーズの長所を生かした騎乗をしたと思いますが、 今回は展開が不向きでした。
おそらくこの馬は、出走メンバー中、最もキツイ競馬をしたのではないでしょうか。それでも4着を確保するあたり、能力の高さは疑いのないところです。

さて2012年の樫の女王。桜花賞馬ジェンティルドンナが、強烈な末脚で外から一気に差し切り2着に5馬身差。見事2冠を達成しました。
勝ち時計も2分23秒6と桁違いの速さで(他馬を含め全体的に例年よりも速いのですが)、いくらペースがこの馬にとって向いたとはいえ、やはり瞬発力では他馬を圧倒しています。
これから迎える夏を無事に過ごし、さらに充実してきたら3冠も見えてくるでしょう。
騎乗停止中の岩田騎手に代わり手綱をとった川田騎手は、落ち着いたレース運びが光りましたね。ほとんどの若手騎手にとって、オークスという大レース、それ も上位人気馬に騎乗するチャンスなどは滅多になく、緊張のあまり硬さのある乗り方をしても仕方がない状況。しかし川田騎手は、スタートから折り合いに専念することを最優先にし、位置取りはどこでも良いという、じつに肝の据わった、なおかつ肩の力が抜けた騎乗ぶりでした。さすが20歳でいくつもの重賞を勝 ち、22歳でクラシックレース皐月賞を制すだけのことはあります。その度胸の良さと大舞台で磨かれた感性で、これからも次代を担う騎手として素晴らしいレースを見せてくれることでしょう。

2着のヴィルシーナは心配していた折り合い面は問題なく、鞍上の内田騎手も上手く乗っていたと思います。ただ、前走に比べ、道中、手応えが怪しくなる場面 が何度か見られました。おそらく2400mの距離はこの馬にとって長いのでしょうが、それでも2着にきたのは、(勝ち馬を除き)今の段階では、他馬より地力の高さでリードしているからだと思います。秋の秋華賞ではどんな競馬をするのか、非常に興味深いところ。楽しみです。

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2012年5月16日 (水)

ヴィクトリアマイルのレース回顧

第7回を迎えた牝馬のマイルGⅠヴィクトリアマイルが東京競馬場で行われました。
優勝はホエールキャプチャ。鞍上はデビュー戦でも手綱をとっていた横山典弘騎手です。
2歳時から常に内容のある良いレースをしてきて、掲示板を外すことのない安定した成績をおさめてきましたが、GⅠタイトルだけはまだ手にしていませんでした。
勝因としては馬の出来の良さや能力の高さもありますが、僕は何と言っても横山典弘騎手の腕が大きいと感じました。
もともと力がある馬とはいえ、やはりこれまで勝ちきれなかったのは事実。それを「強さをアピールするようなレースぶり」で、一見、強い馬があっさりと勝ったように見せたのは、さすがノリという他ありません。何度もレース映像を見返しては、その騎乗ぶりに感心してしまうほど。本当に上手く乗りましたね。
彼はレースであまり速い流れにはならないだろうと読み、6枠12番と外めの枠にもかかわらず、好スタートから内の3番手をキープすると、あとは折り合いをつけて流れに乗り進めました。ホエールキャプチャは、早めに抜け出すとソラを使うところがあるために、直線では追い出しをギリギリまでじっと我慢。GⅠレースにおいて、あれだけ追い出しを待つことは、出来そうで出来ないものです。勝利ジョッキーインタビューで、自分でも満点の騎乗と言っていますが、まさにその通り、大舞台にふさわしい完璧な騎乗でした。

2着にはウィリアムズ騎手騎乗ドナウブルー
この馬もホエールキャプチャ同様、8枠16番という外枠からのスタートで積極的に出していき2番手をとりました。この作戦が好走に直結したと思います。
最近のウィリアムズ騎手は、レースの流れを読んで、外枠でも上手に好位の内につける騎乗が多く、観ていてとても安心感があります。ドナウブルーには初騎乗でしたが、馬を手の内に入れるというよりも、すでに「日本の競馬(傾向)を掴んでいる」のでしょう。その感性や勝負勘の鋭さ、意識の高さには脱帽です。
ほとんどの騎手は、前日や当日の朝からずっとレースを見て(騎乗して)その日の馬場状態(内が荒れてきている等)やレース傾向(外差しが決まりやすい等)を把握することにより、いくつか想定していた戦法を決定させます。今回の横山典騎手とウィリアムズ騎手ともに、その読みがズバリだったこともそうですが、考えたとおりにスッと身体が動くのが素晴らしい。皆さんにもぜひ、スタート後の2人の位置取りなど、このレースをもう1度観ていただきたいと思います。

昨年の桜花賞馬マルセリーナは3着。1、2番人気馬がともに消えてしまったこのヴィクトリアマイルで、GⅠ馬の底力を見せた形になりました。
騎乗予定だった岩田騎手が騎乗停止により、田辺騎手が代打をつとめることになったため、その騎乗には注目していました。昨年、爆発的に勝ち星をあげた田辺騎手、そろそろGⅠレースを勝ちたいという気持ちを強く持っているでしょう。騎手は大レースを勝つことで度胸や自信がつき、自分でその意識はなくとも余裕をもったレース運びができるようになります。また当然ですが取り巻く環境、周囲の評価も変わります。それほどまでにGⅠレースというのは騎手にとって大きなものです。今回は田辺騎手にGⅠ初勝利のチャンスがきたと思いましたが、スタートで後手を踏み、後方からのレースになってしまい、内々で前が詰まって少し窮屈そうな場面もあるなど流れが向きませんでした。
それでも上がりはメンバー最速の33.5秒の脚を使い、見せ場は十分すぎるほど。前残りのレースでここまで戦えることからも、やはり力は相当なものですね。
田辺騎手は残念でしたが、これからもGⅠレースで人気馬に騎乗する機会は多くあるでしょうから、頑張ってほしいと思います。

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2012年5月 9日 (水)

NHKマイルカップのレース回顧

ゴールデンウィーク最終日の東京競馬場で、第17回NHKマイルカップが行われました。
単勝1番人気は秋山騎手騎乗のカレンブラックヒル
好スタートで弾みがつくと、そのまま逃げに出ました。確かに新馬戦では逃げ切り勝ちをおさめましたが、それは(他馬との能力差が大きいために力で押しきれる)2歳の素質馬にはよくあることで、現に、新馬戦以降は好位につけて抜け出すレース運びをして勝ち上がってきました。いくら他にこれという逃げ馬がいなかったとはいえ、まさか1番人気のこの馬が行くとは予想していなかったので少し驚きました。
大事に乗り育てたい3歳のこの時期の、しかもGⅠレース。
常識的には、前走のニュージーランドTで快勝したイメージを壊したくないと考えるものです。良い勝ち方をした後は、わざわざ戦法を変えて冒険する必要が無いし、また違う競馬をすると、せっかくの良いリズムが崩されるおそれがあります。
ですが秋山騎手の意志をしっかりと持った乗り方を見ると、最初からハナに行くことを決めていたように思います。もともと騎手の適性として「肝が据わっている」「冷静な思考力」「判断の速さとそれに即対応できる身体能力」は最低限必要であり、それらを満たしていない騎手はいないと思いますが、それでも今回の秋山騎手の度胸は素晴らしい。他の騎手全て、彼の思い切った策にハメられた印象です。
レースでは、本命馬が他の騎手の標的になるため、今回みたいに逃げられた場合は後ろに付くしかありません。当然競りかけてくる馬はいませんから、ペースはスローになり、カレンブラックヒルの狙い通り。折り合い良く脚をタメて逃げることができ、それがあの伸び脚につながりました。

秋山騎手はデビュー12年目で初めてのGⅠ制覇、それも他馬のしくじり等ではなく、自ら作ったレースをして掴んだ勝利ですから、本当に嬉しいでしょう。元々騎乗技術が確かで、毎年成績が良い騎手です。爽やかで穏やかそうな性格も人に好かれるでしょう。これからもさらなる活躍を期待しています。

2着には2歳王者アルフレード。前走スプリングSでは道悪に泣かされ12着大敗でしましたが、今回は好位に付け、直線では非常に力強く伸びてきました。力を見せる走りが出来たので、自信をもって次に迎えることと思います。

注目していたマウントシャスタは進路妨害により失格となりました。
直線に向き、前が壁になっている状態の時は、モタモタして一瞬でも行動が遅くなると命取りになるため、必死で考え自分の進路を探し出し、見つけたら素早く入っていきます。
騎手は誰でもこうした感覚で騎乗しており、岩田騎手も、はじめは外に出そうとしたようですが行ける場所が見つからず、すぐに内へと切り換えました。ただ目の前が開いたのならともかく、斜め前となると、自分が斜行するということ。斜行する場合には、最後方にいない限り誰かが後ろにいるわけですから、それを常に頭に入れて動かないといけません。
レース中の騎手は(前の馬が後ろにいる自分に気づかず危なそうな時に注意を促したり)お互いに声を掛け合うことがありますが、今回も、被害を受けた後藤騎手は当然、岩田騎手に向かって声を出していたと思います。にもかかわらず、あのような事態になってしまったのは、内に行くと決めた岩田騎手の騎乗が少し強引だったのかもしれません。
失格というのは加害馬・被害馬それぞれの馬主さんやファン、厩舎関係者、生産・育成牧場など多くの人を悲しませる、騎手としては最も避けたい事です。勝ちたいのは皆同じ、プロである以上は冷静さを無くさないようにしたいものです。

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2012年5月 3日 (木)

先週の重賞レース回顧

第145回天皇賞・春が京都競馬場で行われました。
歴史ある大レースを制したのは関西馬ビートブラック。その鞍上は関東の10年目ジョッキー・石橋脩騎手でした。石橋脩騎手がデビューした2003年から約4年間は僕もまだ現役で、当然接する機会はありましたが、彼には当時から好い印象をもっていました。騎乗技術があり、また周りの人に可愛がられる素直な雰囲気をもった青年なので、きっと若いうちからGⅠレースを勝てるような華やかな騎手に育つのだろうと思っていました。そのとおりデビュー初年度に25勝を挙げると、その後も騎手として順調な道程で、とうとうこの天皇賞で初めてのGⅠ勝利。若々しい勝利騎手インタビューを微笑ましく観ていました。

ビートブラックの勝因は、石橋脩騎手の思い切りの良さだと思います。
今の京都競馬場は前残りの高速決着、つまり少々とばしてもバテずに残るという馬場状態になっていますが、石橋脩騎手はこの馬場を味方にし、2番手から早めの先頭で押し切る大胆な行動に出ました。ギリギリまでスパートを我慢するのが普通ですが、彼は馬の力(脚)を信じて追い出しました。この乗り方でなければ、多分勝利はつかめなかったと思います。
向正面では縦長の状態。あれだけ先頭から離されたら、他の騎手はそのうちバテるはずと深追いはしないものであり、また自分が動くことで馬の脚を使うのも避けたいので、誰かが先に動いてくれると期待しつつ自らは動かずに進めます。まして大本命であり最高の実力を持っているオルフェーヴルの姿が見えない時点では周りの騎手は行動を起こしようがありません。
レースの流れ、先頭と後続馬の関係、本命馬の位置、様々な要素が重なって助けられたのは確かですが、いくら人気薄とはいえ度胸のある騎乗をした石橋脩騎手に拍手を送りたい。

注目馬は何と言っても単勝1.3倍の支持を得た三冠馬・オルフェーヴル。
多くのファンが勝利を疑うことなく見守っていたレースで、まさかの惨敗を喫しました。
このような強い馬が負ける理由は、勝ち馬と同じように幾つかの要素が絡み合うからでしょうが、まずは調教再審査のために普段は乗らない(ダート)コースでの調教を積んだことで馬に硬さが出てしまったのではないかと思いました。
それとメンコ。
メンコはレースに集中するために周囲の余計な音を遮断する目的でつけるもので、オルフェーヴルは以前は着けていませんでした。メンコを着けて臨んだ今回、1周目の折り合いのついた走りからは効果が見られたものの、その代わりに周りから受ける刺激による闘争心が若干薄れたのでしょうか。僕が調教師の立場だとしても、当然メンコ着用は手段として用いたと思いますが、欠点でもあり長所でもあるオルフェーヴル自身のナチュラルな走りというのが才能であり、強さの基なのかもしれません。
敗因はおそらく他にもあるでしょうが、4コーナーで外にふくれたところでは、走るのを少し嫌がっているようにも見えて、いかに強い馬でも何らかの事由により力を出し切れなくなるものだと、あらためて思い知らされました。
池添騎手の騎乗は予想通り後方からで、これは前走をふまえたものであり、騎手なら誰もが同じ乗り方をしたでしょう。今回はレースのアヤに加え、馬が昨年とは違っていたことが予想外でした。これからどのように馬を仕上げるのか、次走では再びあの強いオルフェーヴルを見られるのか。目が離せません。

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