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2011年12月 7日 (水)

ジャパンカップダートのレース回顧

先週は阪神競馬場で第12回ジャパンカップダートが行われました。
僕は2000年、第1回のレースでマイネルコンバットという馬に騎乗しましたが、新設された大レースとあって(結果は良くありませんでしたが)とても楽しくレースをさせてもらった思い出があります。GⅠレースは乗る者にとって、大レースゆえ緊張もしますが、それ以上の高揚感があるものです。

さて今年のジャパンカップダート。一昨年の覇者エスポワールシチーと昨年の勝ち馬である現王者トランセンド、この2強の一騎打ちというのが大方の予想でした。それぞれの鞍上がどんな作戦を立て、どうやってレースを進めるのか。僕は、池添騎手が騎乗するトウショウフリークがハナを切り、その後ろに2頭が追走という展開を予想。トランセンドが2番手でその後にピタリとエスポワールシチーという形で、この2頭は高いレベルで力が拮抗しているため、自ら積極的に動くことはせず、鞍上の仕掛けるタイミングが最大のポイントだと考えていました。その牽制がはたらいていると前提したうえで、もしかしたら逃げた池添騎手のトウショウフリークの一発もあるかもしれないとも…。

しかし、実際に先頭に立ったのは、8枠16番の大外枠からゲートを勢い良く飛び出したトランセンドでした。鞍上・藤田騎手の何が何でもハナを取るという気迫を感じたのか、他の騎手は手綱を引くことになりました。戦前には大外枠を不安視する声もあったようですが、騎乗する騎手としては、それほど気にしていなかったのではないでしょうか。
なぜなら、レースにおいて騎手が気にすることは数え切れないほどありますが(例えば、馬の脚質によって内・外どちらの枠が好ましいとか、パドックで馬を落ち着かせるとか、折り合いを最優先に考えたりと様々なシーンで神経を遣います)、その一つに、非常に単純で基本的なことで「枠が奇数番か、偶数番か」があります。騎手はできれば偶数番が欲しいのです。
ご存知の通り、ゲートにはまず1・3・5…と奇数番の馬から入り、それが済むと次は2・4・6…と偶数番の馬が入ります。そして、外枠の偶数番がゲートに納まった瞬間にスタートが切られます。つまり、初めの方に入った奇数番の馬は、スタートまでの待機時間が長い。タイミングを窺いつつ、大人しくしていられる馬ならば良いのですが、ゲートはあまりにも狭く馬にとっては不快そのもので、少しは動いてしまうのが当たり前。首をブンブンと振っている馬が、たまたま首を上げたときにスタートを切られてしまったら、そこでもうダッシュがつきません。スタートでの僅かなタイミングのズレは、レースでは致命的ともいえます。その点、大外の偶数番は入った瞬間にゲートが開くため、非常にタイミングが取りやすいのです。今回のトランセンドもそうでした。
ただ、勝因としてはスタートが良かったことも大きいですが、それ以上に何といっても藤田騎手の好騎乗に尽きます。競馬でハナを主張するときは、今回の藤田騎手のように、他馬に対して絶対に譲らない姿勢をアピールするのはとても重要です。その姿は周りのものを怯ませ、「無理に競っていったとしても、ハイペースになって共倒れになるだけで良いことなどない」と判断させます。こうして完全に藤田騎手がレースの主導権を握り、上手くマイペースに持ち込みました。この時点で藤田騎手の仕事は終了という感じですね。あとはトランセンドの能力次第であり、その能力というのがやはり他馬より優れている以上、今回の2馬身差の圧勝は当然の結果といえるでしょう。

2着にハナ差負け、3着に終わったエスポワールシチーですが、相手はただ1頭・トランセンドだけと意識した佐藤騎手の乗り方は100点満点と言ってよいでしょう。佐藤哲騎手も、これで負けたら仕方ない。トランセンドの方が戦略の点で一枚上手だった上に2馬身も開いてしまっては完敗を認めざるをえません。
また、注目していたトウショウフリークは、ハナを奪うこともできずに15着と惨敗。これまで先頭で逃げ切り、または粘って2着と好走していましたが、逃げられないことによりこの馬の脆さが出てしまったように思います。トランセンドの内枠に入れたのだから、トランセンドを見る形でハナを主張できたはずだけに、少し残念な気持ちが残ります。
競馬において勝つのはただ1頭であり、それ以外の馬は全てが敗者。ただ、負け方にも、例えば脚質の幅が広がり次につながるレースができたとか、自分の競馬に持ち込めたなどの、次走に希望があるような納得できる負け方があります。勝てないまでも、トウショウフリークには今までどおりのレースをして欲しかったと思います。もしも池添騎手が逃げていれば、さぞかし痛快で盛り上がるレースだったでしょう。

今回のレースの主役は藤田騎手。彼の気合と気迫に飲み込まれてしまいましたね。

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