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2011年11月 2日 (水)

現代の日本競馬に思うこと

天皇賞・秋が東京競馬場で行われました。優勝したのは単勝7番人気、イタリアのピンナ騎手騎乗のトーセンジョーダン。豪華メンバーが揃ったうえに、勝ち時計は1分56秒1の日本レコード。迫力と見応えたっぷりのレースが観られましたね。

ちなみに、このトーセンジョーダンを管理するのは、前週、オルフェーヴルでクラシック3冠制覇を果たした池江厩舎。その他にもオープン馬がズラリと並ぶ西の一流厩舎です。また、2着に好走したダークシャドウを管理するのは東の雄・堀調教師。さらに、天皇賞には管理馬が出走しなかったものの、ヴィクトワールピサウオッカで凄まじい実績を挙げ続けている角居調教師など、現在は40代の若き調教師たちの勢いが凄い。今はもちろん、これから10~20年先までの競馬界をもリードしていきそうな勢いがあります。

ただ、そんな快進撃を続ける人がいれば、同時に低迷に苦しむ人がいることも事実。調教師(厩舎)もそうですが騎手の世界においても同じ。上位と下位の成績は、まさに天と地。
昔はそれほど大きな差は感じませんでしたが、時代が変わった今は当たり前なのでしょう。優秀な成績を挙げる厩舎には大手牧場・大手馬主の良血馬が次々と所属し、どんどん勝利を挙げますが、大手との付き合いが薄い厩舎は、良血の素質が高い馬はどうしても少ない。新馬・未勝利から重賞まで、あらゆるクラスの賞金が上位厩舎に入るため、下位の厩舎は本当に苦しい思いをしています。

優れたものが勝ち、劣るものは淘汰される。勝負の世界である以上、努力した人は報われて当然です。それでも、昔も昔なりに羽振りの良い馬主が居てくれる厩舎はありましたし、様々な血統やタイプの馬や、個性的な騎手が各厩舎にいて交じり合い、競い合う時代だったので、皆に等しくチャンスがあったと思います。
時代や景気に左右されるとはいえ、道楽として馬を持つ個人馬主や、自分の牧場に継がれてきた血統にこだわるオーナーが減りつつある現在、投資や商売の対象として勝てる馬だけを扱う流れになると、あまりにも偏りが出て、面白みがなくなる恐れがあります。
『ギャンブル』としての立ち位置以上に、競馬ファンが愛してきた血統やそれにまつわるロマン。生産者のこだわり、馬と人の絆、騎手の想いなどの要素が薄れてきているのは、競馬ファンの人たちも感じていることではないでしょうか。

多くの競馬関係者が競馬界に閉塞感や危機感を抱いており、打破するための方法を考えていますが、僕は大手が中心になって進めていくのではなく、立ち止まってほんの少しの手助けをしてくれるのが良いと思っています。今まで限られた厩舎・騎手に与えていたものを、少しずつ周りに配分するだけ。大手としての自覚や責任を持ち、競馬界全体のためになる行動を期待しています。

僕がまだ若かった頃は、騎手が年間100勝するなんて夢のまた夢。岡部さんに増沢さん、柴田政人さん。それからしばらくして、武豊に横山典弘とこの大記録を達成しています。100勝するジョッキーというのは、その時代を代表し、誰もが認める『トップジョッキー』であり、年に1人か2人、多くても3人ほどの選ばれた者だけに許される称号でした。
しかし、この10年ほどは、毎年5人前後、多い年には9人もの年間100勝騎手が出ています。これはレース数が大幅に増えたわけではなく、それだけ有力馬が上位騎手に集まり、下位騎手に良い騎乗馬が回っていないということが一つの要因として考えられます。
現役時代の僕はお世辞にもトップレベルとは言えない騎手でしたから、妬みにしか聞こえないかもしれないし、確かに自分が『勝ち組』だったならば、このような疑問や不満など全く持たずに生きていたかもしれません。ただ、勝ち組だらけの世界などあり得ません。様々なタイプの人間がいてこそ、トップジョッキーが輝くのです。

それと、気になるのは外国人騎手の存在。外国人騎手が悪いという意味ではなく、単発でGⅠレースの騎乗依頼をしたり、あるいはGⅠの前哨戦だけは日本人騎手で本番は外国人など、乗り替わりの多さが目に付きます。
この天皇賞・秋も、外国人騎手の1,2着でした。海外のトップジョッキーが見られて嬉しい気持ちもありますが、やはり、以前からコンビを組んでいる騎手が騎乗する方が盛り上がるし、それが日本競馬の良さでもあると思います。競走馬のファン、騎手のファンなど応援する方法は人それぞれ。それでも馬と騎手がともに成長し勝利を掴む姿、人はこれに一番惹きつけられるのではないでしょうか。

海外にも通用する強い馬作りを目標に、長い間、競馬関係者は多くの汗と涙を流しました。そして今、世界トップレベルのGⅠレースで勝てるまでになりました。その思いや技術は、競馬に携わる全ての人の努力の結晶であり財産です。あとは原点に戻って、離れつつある競馬ファンの心を掴むことに力を注いでいってもらいたいと思います。
昔の騎手は、馬主・調教師(師匠)理解と支援により育てられました。競争なくては進歩がないのは分かりますが、厳しい冬の時代を迎えようとしている今の競馬界こそ、温かさが必要。人と人、人と馬の結びつきが感じられる、そんな競馬を再び観ることができたら幸せ。

現役を離れた今、僕が強く感じていることです。

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